ラベル新聞 2012年10月1日号

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スペース拡張に込めた真意

㈱フナミズ刃型製版(☎048・465・2140)は8月、これまでの東京・練馬の地を離れて埼玉県朝霞市栄町に移転した。1980年の設立以降移転は実に4回目を数え、着実に事業規模を拡大させている。移転を経て、刃型製版事業者としての今後のビジョンを、木原一裕社長と小ロットシール担当の中村典良課長に聞いた。

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――移転までの経緯は

木原 社内が手狭になっていたので前々から移転の意向はありました。そんな中、当社は今春〝日本に残る最後の一台〟だったフィルムセッターをバックアップ用として発注しました。故障や老朽化に伴う入れ替えではないため、既設機との2台体制になる訳です。「購入したのに置けない」という現実に背中を押される形で、併設可能な場所を求め移転を決断しました。

――移転しての最大のメリットは

木原 スペースの確保に尽きます。旧社屋と比較すると延床面積はほぼ2倍になり、余裕をもった社内レイアウトになりました。また労働環境も格段に向上したので、真夏の作業場でも快適に仕事に臨んでもらえます。東京から埼玉に移ったとはいえ、前の住所からここまで車で10分ほどの距離。配送についても従来通りと問題なく、社員の生活圏を大きく変えてしまわないことも考慮しました。

中村 新社屋は1階がゼンマイ刃と腐食刃の製造、2階が製版、オンデマンド、総務となっています。現在の配置については、より有機的な動線確保や部門間の連携を実現するレイアウトを目指し、各部門のリーダーが意見を出し合って図面に落とし込んだものになっています。

――中村さんはオンデマンドの部門長ですね

中村 ええ、元々はゼンマイ刃の製造現場から始まり、当社でフレキシブルダイ製造を立ち上げるとき部門の責任者に就きました。そこで7、8年を経て、今度は3年前のオンデマンド印刷部門の立ち上げに携わって今に至ります。

――近年のオンデマンド部門の傾向について

中村 短納期化が顕著ですね。中には、電話を受け「今メールでデータを送りましたのでこれから伺います」というような、1時間を切る超短納期の依頼も。立ち上げた当初は、サンプル作成や製版の関連から校正用途としての依頼が多いかと想像していましたが、近年は最終成果物としての依頼が増えています。そうなると必然的に特色を刷る機会も多くなるため、カラーチップも用いつつ指定の色に近づけるように留意しています。

――今回の移転は事業の拡大を意図した経営者の決意にも映ります

木原 現状維持だけでは、企業にとって成長は望めません。われわれは、常にお客さんの変わっていく要求に対応していかなければなりません。

今回の移転に伴う敷地の拡張は、今後新規事業を立ち上げたときに対応可能なスペースを確保する思惑もありますが、一方で既存の設備の増強も視野に入れています。

――具体的には

木原 単純に生産力が倍加すればそれだけこなせる仕事量も増えますし、収益アップや短納期対応、残業時間の短縮も望めるでしょう。しかしそれ以上に、万が一機械の故障や突発的なトラブルが生じた場合、復旧まで生産が停止してお客さんにサービスが提供できなくなることを避けるために、バックアップ機や生産設備の拡充に充てたい、という思いがあります。冒頭のフィルムセッターの例がそれです。

自分たちの都合でお客さんに迷惑をかけたり、当社の刃型や製版を届けられずお客さんの品質を落としたりするようなことがあってはならない。予期せぬ事態が生じた場合も「できません」を極力言いたくない、というのが私の経営者としての信条です。

――そんな貴社のどういった点を顧客は評価していると感じますか

中村 カンプからオンデマンド印刷、刃型や製版まですべて請け負うという窓口の一元化は、お客さんからすれば便利なのではないでしょうか。例えば「先方にIJPで出力したカンプを提出し、OKが出たので、それを本機で再現したい」というIJPの色調に合わせた製版が求められるケース。当社はオンデマンド部門も製版部門も自社に構え、部門間の緊密なリレーションが構築できているので、期待に応える版を提供できます。データ一つでこれらすべてがそろう使い勝手の良さ、そのクオリティーの高さも評価されていると感じます。

――今後の予測や注力する分野は

木原 自社製版はさらに進むと予測しますが、オフセットの製版と違って凸版はデータを微調整するスキルとノウハウ次第で仕上がりが変わります。製版を内製化した会社がどこも一発で完璧な版が作れるか、というとそんなに簡単ではないはず。機械は進化して操作は簡素化、また機能も高度化するでしょうが、それでもまだ当社の製版事業は需要があると考えます。

そして今後については、デザイン制作事業を本格化する方針です。

中小規模のラベル印刷会社が自社でデザイナーを抱えている例は少ないですが、お客さんに「こういうものが作りたい」と相談されることはあるでしょう。相談されてからデザイナーを探し、馴染みのない相手に費用はいくらか、いつ納品してくれるのかと気を揉むより、近しい製版会社が相手なら相談しやすいはず。さらに一般のグラフィックデザイナーと違ってちゃんと印刷の知識を持っているので、理に適ったデザインと再現性の良い版を提供し、カンプや刃型もまとめてお任せいただけます。

――では最後に、新社屋で実現したい新たな目標を

中村 新しいアイデアは社長が外から見つけてきてくれますので、私がなすべきことは、社内の基盤をしっかり維持すること。今後の発展の土台となる既存の事業を、より質の高いものに引き上げていきたいですね。その上で、フナミズ刃型製版でしかできないという独自性を確立できればと思います。

木原 当社ではほぼ100%、お客さん=ラベル印刷会社ですが、常に「お客さんの満足度を高めること」、そのために「サービスの充実化を図ること」を掲げ追求してきました。これからも質の高い刃型、製版、オンデマンド印刷と、デザイン制作というサービスを通じて、ラベル印刷会社ができないことや難しいことを当社が請け負い、皆さんの事業を支えていきたいですね。