季刊シール&ラベル No.26 新年号 Winter 2013

 

 

専門的にフォローし重層的に事業展開

MUDアドバイザー資格 社長を含め14人

シール印刷用刃型の製造から、シール印刷用製版、版下、さらにはサンプルシールも手掛けるフナミズ刃型製版(埼玉県朝霞市栄町4-5-24)では、木原一裕社長が中心となりNPO法人メディア・ユニバーサル・デザイン協会(以下MUD協会)が実施している教育検定にオペレーターを積極的に受験させ、現在は木原社長を含むオペレーター14人が、「アドバイザー(3級)」の資格を持つ。

日本には色覚障がい者が約320万人いるといわれている。それは、男性の20人に1人、女性の500人に1人の割合で色覚障がいが現れる。都道府県の人口で比べると、第10位にある静岡県の375万人より少なく、第11位の茨城県の295万人より多い。また、日本で65歳以上(高齢者)は2925万人で、総人口の23%も占める。高齢化による視力の衰えや、60代では65%以上がかかっているといわれている白内障。

「すべてのものが、すべての人にやさしいデザインにするのは難しいかもしれないが、ちよっとの工夫で見やすく、読みやすく、判別しやすいデザインに変えることはできる」ことに注目し、オペレーター全員にMUD協会の教育検定を会社として受けることを奨励している。実際の現場でも、色覚障がい者‪へ配慮したデザイン、白内障や視力低下した人にも読みやすい文字など、自ら使う名刺やパンフレットなどにも、MUDを意識して作成している。

‪ 同社は刃型を製作する会社として、1980年(昭45)に「船水刃型製作所」として創立。その後、シール印刷用製版システムも導入し、95年(平7)には株式会社に改組し、社名も事業内容を表す現社名に変更した。その後もシール印刷用の刃型(ゼンマイ刃、フレキシブルダイ)や製版(樹脂版、亜鉛版、銅版)、版下・デザインなど、プリプレスに関して専門的にフォローしながら、重層的に事業展開し、シール印刷業界での存在感を高めている。

‪ 例えば、刃型の場合、シール印刷会社同士で貸したり借りたりするケースがある。そこで、刃高の高さの違いで刃型を壊してしまうということを未然に防ぐために、8mmの刃型ではないことを強調するために、9mmの刃型は目立つように赤で表示する工夫をしている。また平圧機用ゼンマイ刃に裏板に塩ビではなく、アルミ板を採用したのも同社だ。裏板が樹脂や塩ビでは、沈み込みによってムラが生じてしまう。そこで同社が考案したのが、裏板にアルミ板を採用すること。500mm角の元板は、どこを計測しても士5μm(0.005mm)以内。しかも、硬度は塩ビよりも高く、使っているうちに刃が沈み込むことはほとんどなく、鉄に比べると柔らかく、刃型をそのまま重ねても、刃先を傷めることがない。

‪ さらに2012年初め、一般のシール印刷会社ではこれまでゼンマイ刃を固定するのに両面粘着テープを使用していたが、これを永久磁石で固定するというツール「エコマグ」(特許・商標登録済)を開発した。印刷現場で求められる迅速なジョブ替え、作業経験なくてもオペレーションができるツールだとして、発表以降全国のシール印刷業者から引き合いが続いている。また印刷機加工機メーカーなどからも注目され、展示会などで同社とコラボレーションして出展するといったケースも増えている。ゼンマイ刃を平圧機のチェス板に固定する際に使われる両面粘着テープは、シワが寄らないように位置も正確に貼るには、熟練の技が求められる。貼り直しや貼り変えるにも、工具(鉄へラ等)を使って剥がさなければならない。その場合も、抜きムラが起きないよう丁寧に剥がし、チェス板や刃型を傷つけないよう慎重な作業が求められる。

それに対して「エコマグ」は、刃型の大きさにもフレキシブルに対応でき、自由に位置決めができる。また簡単にトンボの位置に修正でき、容易に貼り変えができる。磁石は永久磁石として最も強力なネオジム磁石(レアアース磁石)だが、チェス板から剥がすには、てこ(支点・力点・作用点)の応用で、小さな力ではずせる。

こうした刃型部門で数々のソリューション提案をするとともに、製版部門の設備についても拡充を進めている。5年前には国内で普及しはじめた凸版CTPをほぼ業界に先駆け導入し高精細な刷版を提供でき、ジャパンカラーに沿ったカラープルーフ出力や間欠凸版機での印刷をシミュレーションしたカラープルーフも出力できる体制を構築した。

事業の拡充に伴う設備の更新や増設によって、約11年間操業を続けてきた東京都練馬区光が丘公園に程近い練馬区高松の本社工場は手狭になってしまった。そこで従業員がこれまで通り通勤ができ、また坪単価の安い場所として決まったのが、そこから4km程しか離れていない現住所への移転だった。以前と同じ2階建て(1階=刃型部門、2階=製版・版下・シール制作部門)だが、延べ床面積はこれまでの2倍以上の広さとなる160坪。これにより、新たにフィルム出力機を導入した。

取材の中で木原社長は「MUDの取り組みは今後も継続して続け、新入社員にはMUD資格を取得させていく」とし、今回の本社移転は「新たな事業展開の布石」であるとした。亜鉛版については「国産品はほぼ1年分の在庫はあるが、今後米国製のものをレジスト処理して提供していくことを検討している」とのこと。今後も同社から目が離せない。