季刊シール&ラベル No.12 夏季号 Summer 2009

凸版印刷と、ドットゲインについて

国内のシール・ラベル印刷は、凸版印刷(レタープレス)である。

このレタープレスにおける製版について、数回に分けて本誌で解説していきた。

ドットゲインとは

まず、ドットゲインについて、簡単に紹介する。

ドットゲインとは通常、印刷時にアミ点が太る(版よりも大きくなる)現象のことをいう。これは、他の印刷方式(オフセット印刷等)にもあることで、インキの量や印圧等により、アミ点が潰れたり、インキが滲んだりして、元のイメージ(色見本等)よりも、濃く暗くなってしまう。

一般的に凸版印刷の場合、オフセット印刷よりもドットゲインは大きく、印刷物(特に中間濃度付近)はより濃く、暗くなってしまう。こうした場合、印刷オペレーターはインキの量を絞ったり、インキを薄めたりして、色見本等に近付けようとする。しかし、そうするとその分ベタ部の濃度が足りなくなり、結果的にオフセットの色校正等とはかけ離れた、濃淡のない、くすんだ、暗い画像(写真)になってします(図①)。

ドットゲインの変化する要因

次に、ドットゲインは様々な要因で変化する。その要因を列記すると—

  • 印圧
  • 印刷される基材(ミラコートよりも上質紙等の方が滲みにより大きくなる)
  • 印刷インキの種類や硬さ
  • 印刷版(樹脂版の硬さやドットの形状)などが挙げられる。

印圧によるドットゲインの変化

レタープレスの特徴として、インキの盛り量と印圧で他の印刷方法にはないボリューム感や、力強さ、文字の鮮明さを表現できる、といったことが挙げられる。しかし、その印圧によって、ドットゲインが大きくなるという問題も生じる。本来は版が紙等に触れる程度で印刷できることが理想だが、実際は紙等の基材の厚みのムラら印刷機の圧胴の精度等の関係で部分的に掠れが発生する。そのため、より強い印圧を掛けてしまう。徐々に印圧を上げて、掠れがなくなる頃にはアミ部分は濃くなり、小さな文字等も潰れて太くなってしまう。

版によっても変わる

実は、版の硬さやドットの形状によっても変わってくる。ハイライト部分の小さなアミ点は露光時間が短いと飛んで(取れて無くなる)しまう。それを残すために、露光時間を長くして、しっかり焼きつける。それにより凸部分のショルダー形状が太めになり、ちょっとの印圧でも、すぐに潰れて、インキが転写される面積が多くなってしまうという問題が起きる(図②)。

グラデーションの切れ目

グラデーション等、アミの端の部分は、アミが密集した中心部に比べ、より印圧の影響を受けやすく、潰れ方が大きくなり、濃くなってしまう。グラデーションの切れ目がくっきり目立ってしまうのは、そのためだ(図③、④)。

ところが、CTP版の場合、理想のドット形状に近いためか、従来の版に比べ潰れ方が少なく、比較的きれいなグラデーションが再現できる。

色も変わる

ドットゲインは濃度によっても、太り加減が違ってくる。一般的にアミ点の周囲の長さが一番長い50%が最大になると言われている。また50%の通常のアミ形状では、アミとアミがくっ付き始め、その部分にインキが絡み、余計濃くなってしまう。当然ベタ(100%)はいくら印圧をかけても変化しない。

以上の事から、掛け合わせのそれぞれの濃度によっては、色のバランスが崩れ、色あい自体が変化してしまう事もある(図⑤)。