ラベル新聞 2013年11月1日号

フナミズ刃型製版「エコマグ」 それぞれのイノベーションに

㈱フナミズ刃型製版(埼玉県朝霞市栄町、木原一裕社長、☎048・465・2140)オリジナルのゼンマイ刃「エコマグ」が好調だ。エコマグは刃型のアクリル部分に切れ込みを入れ、強力な磁力を持つネオジム磁石でチェス盤に固定して使用する。両面テープが不要となる同技術は、これまでセッティングに要していた時間と手間を省くと同時に、テープ厚がもたらす抜きムラの発生を根元から除去している。上市から1年半が経過した今回、全国に普及が進むエコマグの採用企業2社をリポートする。

「印刷に集中できる」

「面白い、理にかなっていると感じた」と第一印象を語るのは、㈱梅垣ラベルサービス(埼玉県新座市東北、☎048・487・3210)の梅垣博至社長。両社の親交は梅垣和夫会長の時分からで、その縁から完成前のエコマグは同社の協力のもとテスト運用が行われていたという。

当初は磁力による固定でズレないものかと案じていた梅垣社長だが、試運転でネオジム磁石の威力に納得。「エコマグは印刷終了後直ちに外してすぐに次のセットに移行できるため、両面テープを使用する従来の工程と比べて段取りに要する時間は飛躍的に短くなった。実際に測定してみたところ、50㌫以上圧縮できる」と評価する。

導入効果として梅垣社長がもう一点上げるのがエコマグの「抜き精度」だ。エコマグを含むフナミズ刃型製版のすべてのゼンマイ刃には、ベース板にアルミを採用している。理由は、アルミの持つ高い平滑性と、塩ビのように加圧による刃の沈み込みがほとんどないこと。これに両面テープ不要のエコマグを運用すれば、刃型とチェス盤のみで抜きムラを抑えられるのだと語る。

「特に顕著なのは、海外製の透明PET素材。日本製のものより剥離紙が薄いため抜きムラが発生しやすく、これを制御するために手を焼いていた。エコマグを使用するようになって、心配は一気に解消。雄型などは一切不要、抜き精度は常に安定している」

この結果「抜き加工への心配が払しょくできたことで、オペレーターが印刷により集中できるようになった」と、梅垣社長は効果を語った。

効率化の画期的商品

「エコマグは革命的商品。こんなに便利なものを使わない手はない」と評価するのは、㈱クロマティック(東京都足立区堀之内、☎03・5837・7856)の繁田次郎社長だ。

2000年に立ち上げた同社は現在、平圧機と半輪転機、レーザープリンタなどを設備。近隣にある複数の印刷会社とアライアンスを構築して、軽オフから商業印刷、スクリーン、パッド、グラビアまで印刷と称するものは全方位で請け負う体制を整えている。

口コミやメーリングリストを通じてエコマグを知ったという繁田社長は、早速サンプルを請求。「効率化とテープ削減のため、刃型を固定する両面テープを繰り返し使えるよう、当社でもチェス盤側に貼っておくといった、ちょっとした工夫はしていた。エコマグのマグネット方式は両面テープが要らなくなり、資材削減に加えて抜きムラの抑制により大きく作業効率がアップ。とても画期的なアイデアだと思った」

強粘の粘着紙を扱う際、以前は刃がのりに引っ張られて型がズレたりマグネットが外れたりするのではという心配もあったと同氏。

用心したい場合には、予備のネオジム磁石で所定の凹み以外の位置に磁石を追加して補強する、といった独自の対策も忘れない。

「新しいモノや技術が生まれる過程には、必ず不安や心配がつきもの。〝動かないためにどうするか〟といった具合に、次々に生じる課題を乗り越えてそれはさらに進化を遂げる」

だからフナミズ刃型製版に「もっとこうならないか」「使っていたらこんなことが生じた」といった、小さくても進化のきっかけに成りうるフィードバックを通じて、今後も相互に情報交換を続けていければ、と繁田社長は語る。

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「近年、市場にさまざまなデジタル印刷機が登場する一方で後加工機に関する提案は少なく、デスクトップからスピーディーに印刷を行っても加工で詰まっている。抜きムラが生じず、印刷の素人でも取り付けられる簡便さが特徴のエコマグは、こういった後加工機のパーツとしても生きるシーンがあるのでは」(梅垣社長)

「積極的に新たな技術や価値観を追求し受け入れながら、うまく機械を扱うためのノウハウを日々勉強し蓄積していく必要がある。そんなわれわれに、エコマグは大きな刺激をもたらしてくれた。〝クロマティックができること〟をアップデートしながら、お客さまへ常に新鮮でよいモノを提供し続けていける会社でありたい」(繁田社長)

ゼンマイ刃による抜き加工工程にパラダイムシフトをもたらしているエコマグ。純粋な刃型としての機能性もさることながら、採用された先々で発見や可能性を引き出し、それぞれのイノベーションを生み出していた。