シール印刷のUVによる材料の収縮

フルカラー(4C)のシール印刷では、UV照射による材料の収縮現象によって、トンボ1本分(約0.1mm)以上印刷位置がずれてしまうことがあります。
ちなみに先日弊社のお客様であった事例では0.5mmのズレが確認できました。
この現象は特にフィルム素材でよく見られますが、紙素材でも発生することがあります。

今回は「なぜ印刷中に材料が収縮してしまうのか」という原因と、その回避策についてご紹介いたします。

UV印刷の材料が収縮する原因について

シールのUV印刷では、特にフルカラー(4C)印刷時に材料の収縮が発生しやすくなります。
これは、1色刷り(1C)と比較して、4色刷り(4C)の場合はUV照射を受ける回数が多く、材料が熱による影響を強く受けるためです。

また、1C目から4C目まで印刷する間に、材料は4つのUVユニットを順に通過します。
この工程の中で、最初に印刷された色(1C目)と最後に印刷された色(4C目)では、 見当ズレ(印刷位置のズレ)が大きくなりやすい傾向があります。

フィルム素材の場合は、熱が加わることで収縮する性質があります。
また、紙素材であっても、高温になることで紙に含まれる水分が蒸発し、 繊維が収縮するため、同様に見当のズレが発生することがあります。

最近あった事例のご紹介

先日、弊社のお客様で次のような事例がありました。

間欠輪転機を使用し、紙素材の材料に4C印刷(サイズ30×30mm、幅方向に3mmのドブを空けて5面付け) を行ったところ、UV照射による材料の縮みにより、最大で0.5mmの見当ズレが発生しました。

ちなみにその時は、同等の材料であってもメーカーを変更したところ、材料の縮みが軽減され、出荷可能な品質に収まりました。

下のセンタートンボを基準に見当合わせを行った場合についてですが、一番下の面付けに関しては、材料の縮みにより多少のズレが生じても、トラッピング処理によってカバーできる範囲でした。

しかし、一番上の面付けを見ると、絵柄もトンボも大きくズレていました。
(ズレが分かりやすいように、今回のデータにはあえてトラッピング処理を施していませんが、実際にはトラッピング処理でも許容できないレベルのズレです。)

一般的に0.1mm程度のズレであればトラッピング処理で吸収できますが、今回のように最大0.5mmものズレが発生すると、製版段階でも修正が困難になります。

材料の収縮を軽減するための対策

◆材料を変える
材料の保管状況や水分含有量によって、収縮の程度が異なる場合があります。
また同じ種類の材料でも、メーカーによって収縮の度合いに違いが出ることもあります。

◆UVの照射出力を下げる
UV照射の出力を下げることで、材料が過度に熱くなるのを防ぎ、収縮を軽減できます。
また、メタルハライドランプ(メタハラ)からLEDに変更するのも効果的です。
LEDはメタハラに比べると材料が熱くなりにくいため、収縮が抑えられます。

◆印刷スピードを速くする
材料が通過するスピードを上げることで、UV照射の時間が短縮され、材料の収縮を軽減できます。

◆送り方向に面付を増やす
ラベルサイズが小さく、送り方向の長さがUVランプの幅より短い場合、1面あたりのUV照射時間が長くなり、収縮が大きくなります。
送り方向の面数を増やすことで、1面ごとのUV照射時間を短縮し、材料の収縮を抑えることができます。

その他、実際に試した事例はありませんが、一度UV照射のみで材料を印刷機に空通しさせる方法や、5色・6色印刷機などで印刷ユニットに余裕がある場合は、最初の1〜2ユニットでUV照射のみを行うことで、その後の印刷時に材料の縮みを軽減できる可能性があります。

フナミズのアフターサービスについて

版のトラブルが原因で、印刷の位置(見当)がずれることもあります。
CTP製版の場合、レーザーで版表面に絵柄を描く機械を使いますが、この機械に版を巻き付けるときにしっかりと巻かないと、版が少し浮いたまま描画されてしまうことがあります。
その結果、版が通常より少し長くなってしまい、印刷のズレにつながることがあります。

もし弊社製品をご使用中に不具合などが発生した場合は、ご使用された製品とともに、カス上げをしていない印刷物をお送りいただければ、できる限りの検証を行います。
※なお、版の凹みついては、検証により状態の確認は可能ですが、どこでどのように破損したかまでは特定できない場合もあります。

その他にもご不明点やお困りごとがございましたら、できる限りご協力させていただきますので、お気軽にご相談ください。

お客様のより良い印刷ライフの一助となれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

木原 優/Yu Kihara
フナミズ刃型製版の営業担当
本ブログは「シール印刷にまつわるお役立ち記事」をテーマに運営