ラベル新聞 2026年10月1日号に掲載されました

ラベル新聞 第1373号/2026年(令和8年)10月1日/企業・8面 フナミズ刃型製版の掲載紙面

掲載紙:ラベル新聞 第1373号/2026年(令和8年)10月1日/企業・8面

メーカー・サプライヤーに訊く SP ~新社屋移転で大幅拡張、3拠点を統合

フナミズ刃型製版、“Fun to Work , Fun to Live”のものづくり

㈱フナミズ刃型製版(埼玉県朝霞市栄町、☎048・465・2140)は今年8月、直前の拠点から至近の新社屋に移転した。延床面積は2・5倍以上となり、これまで3拠点に分散していた事業部を集約。これに併せて、同社の経営理念を盛り込んだ新しい会社ロゴの運用も開始している。刃型と製版を主軸に半世紀近くシール・ラベル印刷業界を支えてきた同社は、これまでどう歩み、これからをどう見つめているのか。新拠点に移転し再始動する同社の木原一裕社長にインタビューを行い、同社のこれまでとこれからを聞いた。(上田)

ゼンマイ刃、製版、腐食刃、亜鉛版、オンデマンド、ビク型と多角化

強さとは「間口の広さ」と「最高品質であること」

――会社概要と沿革、主たる業務内容について

「1980年にゼンマイ刃の製造加工事業者として義父の舩水信徳が設立しました。私は93年に入社したのですが、同年から新たに製版事業を創設。これに伴い95年、商号を㈲フナミズ刃型から現在の㈱フナミズ刃型製版に変更しました」

「その後2001年にフレキシブルダイ(腐食刃)事業を開始。また06年から亜鉛版事業を、09年にはオンデマンド事業にも着手しました。そして21年、ビク型事業を始めるなどして多角化してきました。事業部が増えると設備や従業員を増強する必要があります。広さを求めて移転するも、事業拡張で数年後にはまた手狭に。このサイクルを繰り返し、今夏を含め移転を5度実施してきました」

――事業拡大の始まり、製版はどういった経緯で

「入社年に私が社長へ進言したことがきっかけでした。外回りを通じて業界の勉強を進めていく中で、ラベル印刷会社は製版屋と刃型屋の両方に仕事を出していることを知りました。90年代初頭は、刃先に墨を塗って紙に転写し、それにフィルムを貼って面付けして製版に用いるような時代でした。刃を受ける土台は高度に制御されたレーザー加工機で溝を切削しているので、刃型の寸法が狂うことは通常ありません。それでも、版と刃型が一致しないと『刃型が悪い』とこちらのせいにされがち。いずれにせよ、どちらかが必ず作り直すことになります」

「当時シール・ラベル印刷業界が成長基調にある中で、一部の製版会社は現状の事業規模を維持したい、設備も人員も増やす予定はない、との考え方も少なくありませんでした。多くのお客さまが『もしフナミズさんで製版を始めるなら仕事を出すよ』と後押ししてくださったことも手伝って事業化へ。製版を開始したことで、ピッチや面付けの不一致もなくなりました」

――各事業の動静は

「その製版事業と祖業のゼンマイ刃で売り上げの7割を占め、フナミズ刃型製版の土台を担っています。ただ、近年はどちらも横ばいで推移する状況。全国の同業者の動静を見ていても、両事業とも今後劇的に増加へ転じることも考えづらいとみています。それでも、依然当社の大切な柱であることは変わりません」

「他方で腐食刃、オンデマンド、ビク型は堅調。前年度比で約10%伸長と、安定した基盤のうえに成長基調にある新規事業が順調に育っているところです」

――ここは負けない、という自社の強みとは

「例えば製版では、狙った色や網点をきちんと再現できるよう知見と理論に基づきデータに加工処理を施しています。DTPから後加工まで、ラベルの製造プロセスに当社が関わっている領域が広いことから、印刷でも抜き加工でも困りごとをご相談いただけます」

「ゼンマイ刃、腐食刃、ビク型に樹脂版や亜鉛版。オンデマンド印刷に加えて自社独自の副資材提供と、お客さまに発注先を一元化していただけるようなサービスの多様さは強みではあります。しかし、ただ〝いろんなことをやっています〟ということが自慢なのではなく、どれも『最高レベルの品質』であると自負できる点が真の強さです」

3拠点体制から集約実現誰1人取り残さない移転

――今夏移転を決断した背景には何が

「前述の通り、その後オンデマンド事業とビク型事業を創設しています。後者は、廃業するビク型の製造加工会社から設備と従業員を引き継いだもので、フナミズ刃型製版の板橋工場としました。さらに、スペースの都合でオンデマンド部門が板橋区の舟渡へ出ていき、いつの間にか3拠点体制に。それもあって、いつかは1つの拠点内に全事業部がそろう社屋にしたいとの考えがありました」

――選定において重視した点も含め新社屋の紹介を

「当初は土地を購入して社屋を建設したいと思っていました。しかし予算面に加え、それだけの場所は埼玉県新座市付近まで行かなければなかなかありません。そうなると自転車で通えない距離に。そこで賃貸物件も候補に探し直したところ、直前の拠点から徒歩5分圏内かつ駅へ近くなるという好条件の物件が出ました。延床面積は3拠点合計の2・5倍以上となり動線や作業スペースもしっかり確保。全事業部が集まっても場所が余っています」

「これまでの4度の移転でも、通えなくなったことで退社した人を1人も出していません。今回も運よく近場に移転できました」

――移転してよかったと実感できる瞬間は

「社員間のコミュニケーションがより活発化した印象です。3拠点でオンライン実施してきたリーダーミーティングは、カメラや音声、画面共有の調子に左右されてどうしても集中力を欠き、実効性にもどこか不満を感じていました。新社屋は会議室だけで3部屋あり、直接同じ空間で意思の疎通を図れるように。物理的にも人と人との距離が近くなり、社員の一体感を醸成しやすい環境に改善できたと実感します」

「当社では給与明細を今でも必ず私から1人ずつ手渡ししています。全員と面談するのは難しいので、代わりに給与明細を渡しながら『最近どう』『この間の件はその後どうなった』などと声をかけています。これまでは給料日に板橋、舟渡に赴き、最後に朝霞へ戻って全社員と話し給与明細を渡す、1日がかりの業務でした。それが今は同じ建物の中を回れば済むように。ただ、1日の歩数は前より確実に増えましたね」

本職の領域に複合技術楽しみ、挑戦する組織

――これまでの「転機」を振り返って

「大小を問わず、これまで転機の連続でした。そのたびに周囲に支えられたりご縁を得たりして、今日まで事業を続けることができました。私自身つくづく〝ツイている人間〟だと、運のよさを実感しています」

「特筆するならば、まずは製版事業を始めたこと。後発ゆえ常にお客さまに教わりながら、助言は何でも取り入れる姿勢のもと、既存の製版会社とは違うやり方で形にしていきました。結果として製版が当社の事業の柱となり、他社に引けを取らない製版品質の高さを誇るまでになりました」

――ほかには

「亜鉛版やビク型の事業を引き継いだことでしょうか。前者は協力会社が廃業することになり『処分するにも費用がかかるので機械をあげる。やる気があるならやり方も教える』と言ってくださり、亜鉛版を内製化しました。後者は当初、レーザー加工機を売りたい人がいると聞いて訪れると、廃業するという話に。聞けば、その会社の最大顧客が当社刃型のビッグユーザーと同一でした。その事実を取引先に打ち明けると『ビク型の発注先をまた1から探すところだったので、フナミズさんが始めてくれるなら本当に助かる』との話。工場・仕事・人を丸ごと引き継ぎました」

「振り返るとどれも事業計画を立て今の形になったのではなく、多くの運と縁の賜物。その都度『面白そうだからやってみよう』と決断してきた結果です」

――貴社の「これから」についての所感を

「まず製版ですが、外注に回帰する兆しもあります。10年ほど前は小型のCTPイメージャーで業界は一斉に内製化が進みましたが、当時と比べて人材不足は一層深刻に。リプレースにしても、当時の価格では買えません。保守もサブスクになりコスト高になるなど、今後本職である当社の出番が増えそうです。次に刃型ですが、ビク型は腐食刃との相性が良好。内側の半抜きを腐食刃で、周囲の全抜きをビク型で構成するといった、当社の事業を組み合わせた複合的な刃型を製造できます。ビク型専業の企業には作れないものを、精緻な精度で提供できる点に商機があります」

「伸びしろで言えば、オンデマンドが一番あると実感しています」

――というと

「製版や刃型は基本的に印刷会社だけが使うもの。他方オンデマンド印刷物は、発注者が印刷会社だけに留まりません。企画会社やアーティスト、生活者など対象は広くなります。今は売り上げに占める割合は僅少ですが、昨年UVインクだけを転写して直接印刷のような表現を行うUV-DTF(ダイレクト・ツー・フィルム)方式のインクジェットプリンタも導入。10年後には、フナミズ刃型製版がオンデマンドの会社として認識されている可能性すらあります」

「ナフサショックに円安、自然災害と近年は予期せぬ外的要因が自社事業に大きな影響を与えることも。1つの事業だけだと、リスクが直撃したり潮目の変化に取り残されたりといったことも避けられません。経営の多角化は柱を分散させ、そうした恐怖から会社を守るための策でもあります」

――総括とこれからを

「当社の企業理念は『お客様の仕事を楽に、楽しくし、仕事を楽しみ、人生を楽しむ』というもの。今後も、製版とゼンマイ刃を安定基盤として大切にしながら、次の柱を育てていきます。また『エコマグ』や『あなあき~』のように、仕事を楽に、楽しく行えるような当社独自の製品開発も継続させます。単に間口の広さをウリにする会社ではなく、どの仕事もよい品質で、相談すれば解決策を示せる会社であり続けたいです」

「今回の移転では初めて私が表に出ず社員が取り仕切ってくれたこともあり、成長を実感して頼もしく思いました。今後は私がいなくても組織を改善したり進化させたりして自走していける集団になってほしいと願っています。皆が工夫し、考え、これは面白そうだと感じたら恐れず挑戦する。これからも会社も社員も成長し続けていける組織でありたいですね」

強さの秘密、カギ握る3つのエッセンス

副資材開発|新奇性で覆す「常識」

同社の知名度向上に大きく寄与したのが「エコマグ」(2012年特許取得)の存在だ。強力なネオジム磁石で刃型を固定する独自の仕組みは、従来の両面テープで固定する常識を覆した。その後改良を施した「同α」も登場、腐食刃やビク型にも応用の幅を広げる。

25年に特許を取得した「あなあき~」は、ゼンマイ刃の内側に貼って「とも上がり」を防ぐスポンジ。通常品は抜き圧がスポンジを押し広げ、それが刃に触れて変形の原因になる。あなあき~は穴が力を逃がしスポンジが強く変形しないので、刃に干渉しない。

オンデマンド事業|UV-DTFが拡げる可能性

「フナミズさんがデジタル機を入れて、シールの少量印刷を受けてくれたらまとめて仕事を出す」。本文中に何度も語られた通り顧客の声と期待を受け、インクジェットプリンタ(IJP)を社内に迎えてデジタル事業部が09年に誕生した。あくまでデジタル設備を持たない顧客の外注先として請け負うスタンスだ。

昨年、UV-DTF方式のミマキエンジニアリング製IJPを導入。早速供給を始めている。写真は木原社長が8月に60歳を迎えた際の記念品。UV-DTFでびんを彩ったシャンパンがサプライズで贈られた。

会社新ロゴ|仕事も人生も「楽しく」

会社のロゴを変えようと考えていたと木原社長。社内公募の中に、フナミズをローマ字で筆記すると頭の3文字が「FUN(楽しい)」とするデザインを見つけた。顧客の仕事を楽にすること、仕事を楽しみ人生を楽しむことを第一義とする木原社長は「これだ!」と方向性を決定。AIも併用して最終デザインを詰め、Uの字に笑顔の口元を加え、企業理念の「Fun to Work , Fun to Live」の文言を配したロゴが完成した。

今後は「FUN」を製品・サービス名につけブランド化を図る方針。仕事を楽に、楽しくする製品を届ける。

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