印刷新報 2023年7月6日号

フナミズ刃型製版 オリジナル亜鉛版が好評 輸入品を自社で独自に加工

フナミズ刃型製版(木原一裕社長、本社・埼玉県朝霞市)は、海外から輸入した亜鉛版の感光膜を剥がし、電子基板用の感光フィルムに貼り直して独自の印刷用亜鉛版を製造し提供している。
海外製よりも薄い感光膜を作ることで、細かい文字や柄などをシャープかつ微細に再現することができ、ユーザーから好評だ。

一時は市場から姿を消す危機、試行錯誤を経て開発

印刷用亜鉛版はもともと国内メーカーが製造していたが、感光液の製造に必要な樹脂の調達難により、2012年に事業を停止。
市場に出回る在庫分がなくなり次第、海外製を輸入するか、マグネシウム版など代替品への切替えを迫られた。
この問題を受けて、一部の企業は廃業した。

同社は、「このまま亜鉛版の供給を終わらすわけにはいかない」との想いから、アメリカからの輸入品を利用したが、感光膜が厚く、細かい文字などがきれいに再現できなかった。

そこで、改良のために試行錯誤を重ね、電子基板に使われているフィルムレジストを試した。
その結果、従来の国内製品と比べて遜色のない、高い再現性を持つ印刷用亜鉛版を開発することに成功した。

同社オリジナルの亜鉛版は、厚みによって、印刷用(シール印刷・活版印刷)に使われる1㎜、箔押し・エンボス用に使われる1・5㎜と3㎜の3種類ある。

木原社長は「特に細かい文字や柄を含むシール印刷でよく利用されている。
最近は、個人の活版印刷や箔押し、また革製品に型押しをするお客様からの引合いなども増えている」と話し、堅調に需要が伸びている。
注文が午前中であれば、1㎜や1・5㎜の厚みの亜鉛版は当日出荷が可能である。

従来国産品と同等の再現性、安定供給体制を確立

現在、同社のオリジナル亜鉛版は、中国製がベースになっている。

コロナ禍による物流の混乱で、アメリカからの亜鉛版の供給が途絶えたことから、一時期、韓国製を使用した。韓国製はレジストの食いつきが非常に良く、細かい線などもきれいに再現できるのだが、表面を研磨する際に傷が深く入ってしまい印刷に影響を及ぼす可能性があった。

そのため、今は中国製に切り替えている。他の製版会社・箔押し会社の3社と共同で発注し、入手している。
中国製はアメリカ製と似ており、再現性が高く、細かい文字などに適している。

しかし、ロシア・ウクライナ戦争を巡り国際情勢・世界貿易の先行きは不透明だ。
そのため、同社では在庫の確保とともに、アメリカや韓国との取引関係を保ちつつ、亜鉛版の安定供給体制を築いている。

また、亜鉛版の裏面には腐食防止塗装が施されているが、同じメーカーの製品でも製造時期によってその塗装状況が異なることがある。
版を固定するために裏面に両面テープで貼るが、テープを剥がした際に塗装が一緒に剥がれてしまうことがある。
塗装が剥がれた部分とそうでない部分が混在すると、次に使う際に厚みのムラが生じ、印刷に影響を与える可能性がある。
そのため、同社では、簡単に塗装が剥がれてしまうような製品に関しては事前に剥がして出荷するという、きめ細かなサービスも行っている。

同社は、1980年にゼンマイ刃型メーカーとして創業以来、顧客の利便性を追求し、さまざまなサービスを展開。
刃型(ゼンマイ刃、フレキシブルダイ、ビク型)、製版(樹脂版、亜鉛版、フレキソ版)、オンデマンドシール印刷を自社生産で提供し、そのサービスは版下・デザイン作成にまで及ぶ。
シール印刷、活版印刷など顧客数は全国500社以上に上る。

新規事業や新製品開発にも挑戦を続けており、2012年に特許を取得した、磁力で刃型を固定する装置「エコマグ®」も好評を得ている。