FR亜鉛版開発ストーリー

―2011 年 6 月某日、印刷用亜鉛板の製造元の企業が、感光液の製造に必要な樹脂の調達が困難になったことを理由に事業の終了を発表。翌年 12 月に事業を完全終了した―

製版会社は在庫分を使用して供給を続けていたが、徐々に在庫を減らしていき、 代替品(マグネシウム版・銅版)への切り替えや海外製亜鉛凸版の輸入といった選択を迫られていきました。海外製の亜鉛凸版は国内製造のものと異なり、感光膜の厚みが安定せず、従来のようなシャープな文字の再現が困難でした。

「このまま亜鉛版の供給を終わらすわけにはいかない」

そう思い、海外製の亜鉛凸版を国内製造の亜鉛凸版と同等の再現性に改良する為の開発を始めました。
海外製の亜鉛板は従来のものよりもレジストが厚い。それが文字を太らしてしまう一つの原因でした。
原因は判明している。ではそこを乗り越えるにはどうしたらいいか・・・※レジストとは、主に工業用途で使用される、物理的、化学的処理に対する保護膜、及びその形成に使用される物質である。 諸般の製造過程で、サンドブラスト、イオン注入、エッチングなどの処理を施す際、被処理物表面の一部を樹脂などで保護し、処理をしたあとに保護膜を剥離することで、被処理物の所望の部分のみを処理することができる。(ウィキペディアより)

時は遡り・・・

実は数年前にも同じ状況があったのです。
レジストが塗られた状態で仕入れていたフレキシブルダイの材料(鋼板)が生産終了すると…。
しかし生板(レジストの塗っていない鋼板)は手に入る。最初は液体のレジストを塗る方法を模索しました。
ただ塗っただけでは、レジストの厚みが不均一で使い物にならない。
塗り終わり、乾燥中にホコリが付着してしまうと使い物にならない。
大掛かりな装置を導入してもうまく行くようには思えない。「液体を均一に塗る」という作業がとても大きな困難として立ちはだかりました。他にレジストを付ける方法はないのかと色々調べていくと、フィルム状のレジストを発見しました。
幸い弊社にはオンデマンド印刷の部門でラミネータを使用しており、これは使えるのでは!?と、メーカーに問い合わせ情報収集。実験開始。

お!うまく貼れる!
次はエッチング(腐食)の工程。

あ、ダメだ、エッチング中に途中で剥がれてしまう。
脱脂(表面の油分を除去すること)してから貼ったら?
板を温めて貼れば強力につくかな?
表面を研磨したらどうだろう?

試行錯誤の連続でした。

しかし、最終的に脱脂・板の温度・表面研磨の具合の最適解を導き出し フレキシブルダイの生産を続けることができたのです。

亜鉛凸版も同じように出来るかも!

まずフレキシブルダイで使っているレジストフィルムを使ってみました。
ただレジストが厚すぎて再現性の改良には至らず。もっと薄いレジストフィルムはないのか?
別のメーカーも含め探した結果、今まで使用していたものよりも更に薄いフィルムを発見!
早速購入してテスト。しかし厚みが減るほどレジストは剥がれやすくなります。
ここからはフレキシブルダイと同様、最適解を導き出すためのトライ&エラーの繰り返しです。

亜鉛凸版にとって重要なもの-二つ目-

亜鉛版の製版を行う上で、レジストの品質以外にも重要になってくるものがあります。それが「現像液」です。

樹脂版と同様、亜鉛凸版やフレキシブルダイにも「現像」という工程があります。

※現像の工程・・・
1.レジストが塗られた(貼られた)材料の表面にネガフィルムを乗せ、紫外線をあてます。
2.ネガフィルムの透明な部分には紫外線があたり硬化します。
3.専用の薬品(=現像液)で洗い硬化した部分以外を除去します。
4.そうすることで画像部分を保護するマスクができます。

現像液の種類は使用されるレジストによって変わり、さらにその濃度や温度、時間によって最終的な品質が左右されます。

国産の亜鉛凸版に近づける為の試行錯誤・・・
これも実験の繰り返しです。

こうした積み重ねと努力の結果

国産亜鉛凸版に引けを取らないフナミズ刃型製版オリジナル亜鉛凸版「FR 亜鉛版」が誕生しま
した。※FR とは、FilmResist と FunamizuResist のダブルミーニングとなっております。今後、亜鉛版の需要がゼロにならない、もしくは亜鉛版の供給がゼロにならない限り、弊社は再現性が高く、皆様に満足してご使用いただける亜鉛凸版の作成を続けていきます。